2009年8月19日水曜日

【人間中心イノベーション】@日経新聞:経済教室

日本経済新聞 経済教室 27面 2009/08/18


堀井 秀之 教授 (東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻)

知の構造化センターセンター長

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↓本文より:

☆「日本型イノベーション」のあり方  生活者の感性 呼び起こせ

 ≪ポイント≫
 ○ 「イノベーション=技術革新」の誤解とけ
 ○ 人間中心のイノベーションで日本は優位
 ○ 「デザイン思考」重視し、日本らしさ追求を

◎「技術中心」から脱却を  価値観や社会の変化誘導


 イノベーションの概念を導入したシュンペンターは、新しい発明なしにもイノベーションが
生じると強調した。しかし、日本が技術開発を得意とするがゆえに、イノベーションを技術
革新という狭い意味でしか用いていないケースが多い。激しい技術開発競争のなかで、技術
目標の達成に専念するあまり、いつしか手段は目的となった。価値の創造が目的であるのに、
価値創造の手段である技術開発が目的となってしまったのだ。

 イノベーションの本来の意味に立ち返り、どんな方向を目指すべきなのだろうか。それには、
技術中心主義を改め、生活者に照準を定めることが重要だろう。生活者が潜在的に何を求めて
いるかを感知し、「ああ、私はこういうものを求めていたのだ」と思わせるようなモノや
サービスを提供できるようにすることが課題になるのだ。

 これに対処する上で、「人間中心イノベーション」という考え方が重要となる。人間中心
イノベーションとは、人々の生活や価値観を深く洞察し、新製品やサービス、ビジネスモデル、
社会システムなどを生み出していくことで、人々のライフスタイルや価値観の変化を誘導する
ものだ。

 日本人の感性に基づく優れたモノやコトを次々に生み出していくこと、すなわち「日本
らしさの追求」こそが、日本が追い求めるべき戦略である。この点で、日本人に独創性が
ないというのは大きな誤解であり、世界が称賛する「クールジャパン」に象徴されるように、
日本人は人間中心イノベーションを生み出す能力に長けている。

 人間中心イノベーションを生み出すためには、注目する状況に没入し、そこに登場する人に
なりきることが重要である。


対象に棲み込むことが得意な日本人は、もっと多くのイノベーションを生み出してもいい
はずだ。残念だが、日本にはイノベーションの芽を摘み取るメカニズムも存在している。
「そんなことはすでに試した」「そんなことはやったことがない」「ここではそんなふう
にはしない」などは、アイデアを殺すセリフである。習慣・既成概念、自信喪失、臆病等
が独創力をはばむことも知られている。イノベーションをはぐくむ環境を整えることも重要
だろう。


デザイン思考は大学院教育の中にも浸透し始めている。米ビジネスウィーク誌の2005年
8月1日号で、「明日のビジネススクールは、デザインスクールになるかもしれない」と
題する特別リポートが掲載され、米スタンフォード大学、米イリノイ工科大学などの新たな
取り組みが紹介された。このトレンドに大きな変化はなく、むしろ勢いを増しつつあるよう
に見える。

 「日本らしさの追求」を進めて、世界から称賛される日本発の優れたモノやコトを生み出す
には、日本社会にイノベーションの生まれる環境を整える必要がある。今年9月に東京大学
知の構造化センターの実施する教育プログラム、iスクールが立ち上がるのもそうした狙い
からだ。社会問題をイノベーションの機会とすべく、新しいリーダーシップの育成やクリエ
ーティブ思考のための知の構造化を進める。ここで培われたイノベーションを生み出す能力が
それぞれの分野でいかされ、やがて、新しいアイデア、新しい製品、新しいビジネスモデル、
新しい社会システムを次々と生み出し、日本社会を変革することを期待したい。

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【感性価値創造=コトづくり】:
「面白い・やる気になる」という「ヒトのココロ・気持ち」をつなげる
『道具と仕組み』づくり


【生活者の感性】【価値観や社会の変化誘導】【社会問題をイノベーションの機会に】
:我々の視点・方向性【コトを生み出す】取り組みの励み・勇気としていきたい!!


株式会社 白川製作所

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